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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

食べたいくらいアイ・ラヴ・ユー

やっぱりこれ読むと気分が悪くなる人もいるかもしれない(とくに男性)と思ったから、「続きを読む」にしました。

友だちの日本舞踊の会を観に行ったら24時間前だった。金曜日に「ちきしょー、女に生まれて失敗したぜ」ってくらい女の子をうまく連れ回したパーフェクト・デートを決めこんで有頂天になっていたので、こんなに遊んだ翌日は日曜日に違いないと、脳が錯覚したらしい。でもまだ土曜日だった。

そんなおっちょこちょいサンのアタクシはいつも救われている。そうだ、ここってしばらく会ってないハニ〜が住んでる街じゃん、と気がついて即、電話。「もしもしハニ〜? apoですけど、今日ヒマ?」と突撃してみた。結婚して娘が来週3歳になるので、そろそろ酒でも飲みましょうよったら、「あれー、聞いてないの? もう次のが入ってるのよ、今、5か月。ほらっ」とハラを見せられた。いつの間に、さすが、やること手早いな〜と感心しつつ、アタクシもすかさず、ナイスなオファーを思いつく。

apoには10代の頃から酒とプロレスに明け暮れた悪童女グループがあるのだが、かねてからその連中の間で「誰かが次に妊娠したら、胎盤パーティを開こう」って話をしていた。だけど、その連中が誰一人妊娠する気配がない。そこで、あ、ハニ〜にだったらオファーを出せるかも!とひらめいちゃったわけだ。

母胎にとって、胎盤は天然の子宮収縮剤だ。草しか食まないバンビちゃんたち、シマウマちゃんたちが出産後、自分の胎盤をペロっと平らげちゃうのは外敵に出産の痕跡を気づかせないことってと同時に、自分のためでもあるのだ。自然の摂理はよくできている。そして女性にとってはお肌をツルピカにする天然のプラセンタなわけだ。しかも出所を熟知してる産地直送の新鮮、ホヤホヤ。だから、仲間が子どもを産んだら、そいつの胎盤を別の仲間が調理して、みんなで食べてみよう。ショウガとニンニク利かせて炒めるのがいいかしら、なんて相談してたわけだ。

だけど、こういうネタはのっぺやたらに振れるタイプのものではない。今までの経験上、比較的、違和感なく受け止めてもらえるタイプは、
(1)経産婦
(2)プロレスあるいは格闘技好き
(3)動物好き、ただしペットだけじゃなくて爬虫類とか恐竜とか虫も。さわれなくてもペットと同等以上に興味がある
(4)「信じられなーい」を連発しない
(5)こちらがネコをかぶる必要がない
(6)レバーとか砂肝とか、臓モツが食べられて、しかも好き
になる。今回、アタクシが白羽の矢を立てたハニ〜は、この条件をバッチリ満たしているわけだ。

案の定、オファーをしたらノリノリで「でもさー、刺身で食べるなら、かなり血抜きしないとクサいと思うよ」「じゃあ、加熱するなら当日で、刺身ならその日は血抜きして、翌日ってとこかな」とか「うちの病院、けっこうそういうのも大らかだと思うからオッケー。もしそうやって胎盤お持ち帰りできたらさ、節約もできるかも」「なんで?」「『胎盤処理費』って結構な額とられるのよ? あれって生ごみじゃなくて産業廃棄物じゃん」「へー」なんて話がハズミまくり、アタクシたちは数か月先に食べられる予定の胎盤についてグルメ話に花を咲かせた。ところが30分もしたところで、突然ハニ〜が顔を曇らせたのだ。

「あ、ごめん、やっぱダメだわ。あたし、C型肝炎キャリアだから」

今回の妊娠でわかったそうだ。C型肝炎ウイルスは感染力がとても弱く、ふつーのセックスや注射針の使い回しくらいじゃうつることは少ない。たいていは輸血とか、かなり広い傷口にキャリアの血液がふれるかした場合だ。ハニーの場合、ここ最近、そんな機会は出産のときしかなかった。

「最近、検査の精度が上がったんだって。だから、もしかしたら知らずにずっと昔からキャリアだったのかもしれないけど。だけど、あ〜あ。あたしの胎盤って食べてもらえないんだね。なんだかショック……」

ふだんから、アタクシに食べられるモノは幸せだから、成仏できるはずだと確信している。だから、アタクシが食べることによって、うっかり間違ってハニ〜の体に入ってしまった肝炎ウイルスも成仏してくれるんじゃないかと、そんなふうに考えた。「よく焼いたら、いけるんじゃない?」「血抜き+下ゆででオッケーだよ」といろいろ提案したんだけど、アタクシよりもうんと理性的な彼女は「止めておいたほうがいいよ」と言う。C型肝炎ではすぐ死なない。自然に治癒してしまうこともある。でも慢性化した場合、長年かけてジワジワ肝硬変になり、肝ガンに至る。

「でもさ、こんな話、なかなかできないじゃん。わざわざ電話して話すことでもないしさ。話せてよかったよ、ありがとう」と言うハニーのことを、アタクシは何としてでも喰いたい、と思った。生まれてはじめて、神に反逆したくなった。