どなん(愛飲酒記)
いくらなんでもこんなときに、赤い誘惑ちゃんたちや白い妖精ちゃんたちを開けるわけにはいかない。空けるなんてもってのほかだ。こんなときのために、アタクシは最終兵器もちゃーんと備蓄している。
与那国名産 花酒どなん(60度)
国泉泡盛(合)
これだ。今日のアタクシに必要なのはコレだ。税法上、高い度数から“原料用アルコール”に分類されるスピリッツだが、“花酒(=花咲き)”の名前のとおり、口に含んだとたん、芳香が鼻腔へと抜けていく。こいつをたっぷりロックアイスを入れた江戸切り子のグラスに注いでぐいっとあおれば、香りよりもっとドラマティックな展開のはじまりだ。
冷たい火の玉が食道をゆっくり落ちていく。胃にポタリポタリと一滴ずつ染みこむ冷たい火の玉が、十分に仲間をあつめたところで、発火する。そして吉原炎上だ。燃やせ燃やせ焼き尽くせ! もうちょっとだ、葉子。たのむや、おっちゃん。真っ白なハイになるまで、やらせてくれ。何にも言わねーでよっ……。こいつさえ知ってりゃ、ジョーだって死なずに済んだかもしれない。