秘密のイヤミ

7月の終わりからずっと悩んでいたことにやっとサヨナラできた。11月からは新しい旅立ちになる。

それに先立ち、10月20日、新たに法人登記した。よみ方は同じ名称で法人格を変えて。ドメインはすでにアタクシがオーナー。このドメインには10年の実績がある。登記が済むまで旧法人格の代表には言わなかった。理由はいろいろある。大きなこととしては、もとより代表変更には合意していたけど、蓋を開けてみたらなんと10年もの間、この法人の役員変更の届けはしておらず、登記上は「役員なし」状態が続いていたこと。それを知ったのが今年の7月末。代表になる合意をしたのが2年前。それから事務所移転などがあり「早くしなさい」と言われて知人に頼んで。書類を集めたら、こうなっていたと知った。そのときは「は？」だった。あなたが立ち上げた法人の登記だとかの面倒を見るってあなたの仕事じゃん？「今ならどさくさにまぎれて通るかも」ってなに？っていうか、これって、事業継続の意思がないって証左だよね？　ありていにいえば、「面倒になった」とか「もうやりたくない」とか。じゃなければ設立から2年で役員重任の届けなど放置しようはずもない。ほかにもいろいろとあった。この事業を行ううえでのアンフェアな内部規制、他事業との差別、他事業への協力・使役……キリがないので細かく書くつもりはない。面倒もみてもらったという感謝はあるので。

登記が完了した日、挨拶に行った。法務局で真新しい法人履歴事項全部証明書と印鑑証明書を受け取って、かねてから決めていた通り、グリル・エスでタンシチューとコロッケでミニ祝杯を上げてから。

もちろん、アポだけに、アポは入れた。今までは内部の人間だったけど、外様になるので手土産も持参した。もとから外様だったかもしれない。先方からしたら、ずっと追っ払い続けていたところにいつまでも居座っててうざいと思っていたのかもしれない。そのあたり、嫌われ者過ぎて、鈍感になってるから、そうだとしたら申し訳ない。
ただ、こっちもこっちで退却はは静かに速やかに行った。あくまでも「ご報告とご相談」というていで、欲しいものはいただくご了承を得た。

そうそう、手土産ね。馬車道のガトー・ボワイヤージュの半生菓子（って種別かどうかわからない）にしたの。ケーキ類の生菓子でも、クッキーとか贈答品によくある日持ちのする焼き菓子でもなく、その中間くらいの。なんでっていうと、ケーキほどじゃないし、常温保存可能だけど、腐る一方、冷蔵するとマズくなるから。
それと、この美味しい名店の名前で。「ガトー・ボワイヤージュ」とカタカナで表記される「Voyage」は「ボン・ボヤージュ」のボヤージュ、つまり旅。わたしは送られる側だが、それはあなたの役員入りを見送って新法人を設立した意思表示だ。そして、あなたなしで旅立つわたし、でもある。それが美味しい（bon）ものであるように、呪いを込めた。

この美味しいお店のことをよく知ってはいても、このことを知らない、知るはずもないその人への贐だということをわたしは誰にも言わない。でも、祝福されなかったこの10年にはこれでサヨナラする。少なくともわたし一人の祝福とともに。正式発表する前に書きじゃくっておきたかった。今後、この件でため息を吐くことは、もう、ない。たった数日だけで自由度がまるで違うのだから。

さあ、新しい航海を楽しもう！