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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

グァテマラ日記(10)

土日を利用して、泊まりがけでチチカステナンゴへ。シェラ(ケツァルテナンゴ)からバスで4時間半、キチェ県の県都サンタクルス・デル・キチェからバスで30分の山間にある村だ。インディヘナの村といえば、それぞれ村で決まった曜日に立つ市(メルカード)もグァテマラ観光の目玉だ。なかでもここ、チチカステナンゴやサンフランシスコ・デル・アルトは規模が大きい。そして観光スポットの多いチチのほうが、品物も値段も観光客向けだ。チチのメルカードは土日に立つ。ガイドブックにはたぶん木曜日と日曜日と書いてあるけど、前日の水曜日と土曜日もやっている。いずれも翌日(日・木)になると値段がダブルアップする。

だけどapoは別にショッピングに来たわけではない。パスクアル・アバフという神が宿り、セレモニーが行われる山を見に来たのだ。さらにマヤの神話ポップ・ヴフ*1が発見された場所としても有名なサント・トーマス教会。またキチェ県は、93年のノーベル平和賞受賞者リゴベルタ・メンチュウの出身地でもある。

朝、シェラを出て、バスの運ちゃんがあんまりカッコよかったので、チチの街の入り口のアーチを見逃してしまい、うっかりキチェまでついて来てしまったけれど、何とかチチに昼前に到着(チチ-キチェ間が近くて、しかもバスが頻繁にあって、ラッキーだった)。半分開いているサント・トーマス教会前でメルカードを眺めていたら、ガイドにつかまってしまった。

「ホテルは? セレモニーは?」気さくなこのガイド、トーマスがちらつかせる食いつきやすい餌にうっかり食いついてしまう。ホントはビールでも一杯飲んで、ゆっくりしたかったけど「今、山に行けばセレモニーが見られるよ」と言われて「こうしちゃいられない!」と思っちゃったのだ。結果的に、山には行ったけど、セレモニーは終わったあとだった。それでも仕事熱心なトーマスはせっせと仕事をする。サセルドーテ・マヤは男女半々とか、セレモニーのこと、その円陣のおのおのの位置に配された神の名前と役割、パスクアル・アバフの下の仮面博物館、近くの遺跡(たぶんウタトランのこと。タクシーで案内しようか?と)をガイドして、ホテルとサセルドーテ・マヤを紹介した。

その紹介された一泊80ケツァールのホテル、サルバドールからシングルおよそ80ドルのマヤ・インに移る。一度、チェックインしたから、サルバドールはもちろんお金を返せないと言うだろうと思ったけど(でも、悪態吐きながら5ケツァール返してくれた。返してって言ってないのに)、apoにはラグジュアリーな時間と場所が必要だった。──それとサセルドーテ・マヤ。

シェラで「サセルドーテに会いたい」と言ったら、旅行会社を紹介され、次はマードレが「私がサセルドーテ・マヤ」と75ケツァール、タカった。それらをうまく切り抜けたのに、ここではサント・トーマス教会で会ったガイドのトーマスに300ケツァールと言われて、しかもそれを払った。

バカかもしれない。買い物の仕方も忘れてしまったようだ。よそで30ケツァールで売ってるズボンを85ケツァール(それも15ケツァール値切って、だ)で買ってしまった。布2枚も40ドルで買ったけど、本当の値段はわからない。だめだな、apoは。徹底的なお人好しにも、徹底的なネゴシエーターにもなれない。

しかも、トーマスが紹介してくれたのはただの占い師だった。収穫はツィッテが何か、どうやって使うのかをわかったこと。ツィッテとはマメ科の木の赤い実で、1セット260ツブ。4ツブ1組を作りながら、余った数で易占のように占う。この占い師は「カスティーリャ語(スペイン語)を話さないから、私が通訳しよう」とトーマスは言ったが、別にトーマスの通訳はいらなかった。なぜならそこにいた孫の男の子のほうがよっぱどトーマスよりあてになるし、しかもapoが尋ねると、このジイさんはわからないはずのスペイン語でどんどん答えてしまうからだ。だけど、占いとしても、シャーマンの仕事についても、大した話は聞けなかった。彼は占い師で、マードレは拝み屋。apoが会いたいのとは違う。

シェラまでは流されてみたけれど、もう流されるのはやめよう。80ケツァール棒に振っても──そう思って、マヤ・インに来た。ここは暖炉のある、部屋に鍵のない古いホテルだ。部屋に電話なんてものはない。その代わり、それぞれの部屋には“右腕”が付く。apoの右腕はミゲルという年齢ならおじいさんに近い男性で、何時でも扉を開けると「マダム、何か?」とうやうやしく静かにやってくる。ゲストはそんな右腕に暖炉の火やルームサービスや考え得る何でも、頼めばいい。

ホテルの中庭に面したバーでマリンバの生演奏を聴きながら、ワカモレ*2をつまみに白ワインをやる。それから、寒くない浴室で、久しぶりのバスタブを堪能したあと、スパークリングワイン。どちらも1本125〜130ケツァール。なんて安いことか! もしサルバドールにいたら、こんなぜいたくはできない。もう流されるときは終わった。選び、選ばれよう。扉を開かなければ、右腕は来ないし、望みも聞いてはくれない。でもorder(命ずる)すれば、開かれる扉はたくさんある。

*1:ポポル・ブフと一般的には言われているが、大きな影響を受けた実松氏の著書にしたがってapoもポップ・ヴフで表記を統一します。

*2:ワカモレ/guacamole。アヴォカドのディップ