[ _e_x_h_a_l_e_ ]

apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

野田秀樹「透明人間の蒸気(ゆげ)」

その後、すこやかな眠りにつき朝10時25分にハッと目が覚める。そうそう、マダムDと「透明人間の蒸気」を観に行く約束をしてたンだった。もうちょっとまどろみたい気持ちはヤマヤマだったけど、布団滞留時間が延びるのはデンジャラスすぎるので、勇気を出して起床。apoが遅刻することを想定して待ち合わせ時間をサバ読んで伝えたマダムDに、「なぜ今日に限って遅刻しない?」とシカられる。ああ、勇気なんか出すンじゃなかった。

全編通して“行間を読む”必要のある(というか、読めば読むほど楽しい)セリフも言葉遊びも楽しい。ネタバレになるのはアレなのでちょっとだけ書くと、“昭和16年”、麗しき20世紀の日本を21世紀にまで残すというミッションを背負った“軍”が、20世紀に消えるであろうものをタイムカプセルに詰める。そこには人間も必要。そのために人間を眠りにつかせる果実がナシの“二十一世紀”、舞台設定は“鳥取砂丘”。結婚詐欺師を“神サマ”だと盲信する三重苦のヘレン・ケラ(宮沢りえ)は、“足の裏で日の出を感じる”が、この砂丘から出ることができない。登場人物たちの思いとは裏腹に“二十一世紀”は坂道を転げ落ちていく。

「人はなんで砂丘にやってくるか知っている?」
「足跡を残すためでしょう?」
「実は足跡を残すためでなく、消すため。砂漠の足跡は1日で消されてしまうから……」

90年代に夢の遊民社の芝居を一度も観ていないのだけど、野田秀樹がこんなに政治色の強い芝居を作る人だとは知らなかった。マダムDは、睡眠不足のapoが発するイビキ被害を危惧していたが、そんな心配御無用の、すごく愉しめる舞台だった。