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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

リアソールを悪魔が支配した

2002年W杯で「世界でいちばん美しい」と形容されていたポルトガル・サッカーをはじめてスカパー!で観たとき、衝撃と畏怖に襲われた。どこがどう「美しい」のかがわからない。apoの目の前で行われていたのは、削り合いなんて生やさしいものではなく、暴力的なカオスだった。「おい、誰かこいつらにルールおせーてやれよ」と思ったものだ。個人的に、それは決して嫌いではないが。

4/8にACミランが虐殺されたリアソールでは、デポルの頭上に神が降臨していた。ズタズタに刻まれていくミランのラインをバレローンが稲妻のように切り込む。その結果、4-1という負けるはずがないスコアでリアソールに望んだミランを、4-0で完封したのだ。最後に効いたのは、デポルがアウェイであげた1点だった。この1点に、ミランは泣いた。

4/22の1stレグは0-0だったが、デポルは累積イエローリーチだったマウロ・シルバがイエローをもらい、デコを蹴ったアンドラーデが一発レッドをもらった。だから今日は出場できない。対するポルトは、イエローリーチ組はいるものの、前節の欲求不満を爆発させるべく、のっけからヒールに徹していた。自分とこで悪い子するより、外でやったほうがお母さんを悲しませたりしないもんだ。くわえて“肌が合う”チーム同士。ぜんぜんボールがめぐるスピードが落ちない。もしかしたらこんなに走らされるコッリーナさんを見たのは初めてかもしれない。そんなスピードのなかで、ポルトは持ち前のポルトガル・サッカーを見せつけてきた。ひじ、ひざ、スパイク。当たるものなら、なんでも。いや、すごい。デポル・サポの苛立ちが手に取るようにわかる。

雨のリアソールに降臨していたのは、神じゃなかった。フェアプレイやスーパープレイより、“勝つためなら、魂なんて売り渡してやる”プレイを気に入ったらしい。ちょろっと引っかけた負け犬顔のデコが倒れると、太っ腹にもPKのチャンスをポルトに投げて寄越した。デポルは、その何倍も削られ、小突かれ、殴られていたのにも関わらず。デル・レイのPKに、GKのモリーナは正確に反応した。だけど、あと5ミリ指の長さが足らなかった。この1点だった。この1点に、デポルは泣いた。

それでもずっとデポルは踏ん張った。イエローリーチのナイベトがイエローをもらって退場し、10対11になってからも頑張った。そして後半67分、apoが待っていたディエゴ・トリスターン、登場。ハンサム好きの勝利の女神の降臨を待つ。

しかし、リアソールへの女神の入場を、何者かが阻んでいた。“それ”がディエゴ・トリスターンをそそのかす。1日にはRマドリ相手に先制ゴールを奪い、スランプからの完全復活を証明してみせた彼に、ゴール前で下手くそな芝居を打たせた。違う、違う、ディエゴ。apoが見たかったのは、そんなあなたじゃあない!

ここは、サッカースタジアムではなく、メヒコのアレナ・コリセオ(プロレス会場)か?と思うような割れんばかりの「負け犬コール」。涙にくれるデポル・サポ。もちろんどんなことが起こっていようとも、決勝へ駒を進めたFCポルトに包まれているのは歓喜だ。

魔の刻だった。サッカーはすばらしいから、いろんな者が魅了されるのだろう。神も、ときには悪魔さえも。そして、そんな不気味さも、否定することのできないサッカーの魅力の一部なのだ。最近、忘れていたことを思い出した。

ACミランを虐殺したデポルが敗れてうれしいかって? どうだろう。たとえそれが邪悪な力でも、味方につけたポルトを賞讃はする。そもそも、モナコに8点も獲られるようなデポルがここまで来たこと自体、奇跡なんじゃないの?と皮肉も言える。けれど、賞讃や皮肉よりも、魔の刻にハマってしまったデポルへの深い深い同情のほうが圧倒的に今のapoの心を支配している。

……おっといけない、こんなところでのんびり同情している場合じゃなかった。なんでも今日は“締め切り”らしい。さっ仕事でもするか。今夜ってーか明朝の勝利の美酒をおいしくいただくために。