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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

ヴァレンシアから持ってきた“We are the Champion”の空気をポルトにかっさらわれてしまいました。

モンテカルロは悲しみの朝を迎えました。アタクシもドイツで凍えています。何でココはこんなに寒いの? ああ、たまらない。いっそラインガウで大好きなリースリングに溺れようと思ったけどダメ。一刻も早く地中海の太陽を浴びないと、死んでしまう。飛行機取れなかったけど、ブリュッセルまで出て、TGVプロヴァンスに帰ります。アタクシには今、リアルなヴァカンスが必要。そして、モナコのみなさんにも。

詳しくはまた……。

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なぜ、あんなモリエンテスの大写しにしたのだ? あの大写しは、スタァを小さな男の子にしてしまった。ママとはぐれ、しゃがみこんで途方にくれる迷子のようなモリ男。ちきしょう、かわいすぎるじゃねーか!? けれど、アタクシがスキなモリ男は思いっきり尖がったモリ男なのだ。刺激されたいのは母性本能じゃなくて、官能中枢なのだ。ああ、あのクソカメラめ……。

スタジアムは、ウンカのように押し寄せたポルトサポで青く染まった。贔屓目に見積もってもポルト8対モナコ2ってとこだろう。ゲルゼンキルヒェン駅に降りたアタクシはACミランのウインドブレーカーでモナコのマフラーとモリ男トレーナーをしっかり隠して震えていた。ようやく、モナコ・サポの一団がいるバールでビールを頼み、一息つく。「オマエはいったいどっちのサポなんだ?」というモナコサポなオヤジどもにトレーナーのエンブレムと袖の“モリエンテス”を見せて「アレ!モナコ!」。赤白のリボンを首につけてもらって、記念撮影大会が始まる。とはいえ、ポルトサポのみなさんも恐ろしくなく、むしろ友好的。あちこちでサポ同士がいっしょに乾杯したりしてお祭りムードを楽しんでいた。こうなると、フランス語がわからないアタクシは、どっちかといえばスペイン語がムリムリ通じてしまうポルトサポな方々との交流が増えてしまう。ゲルゼンキルヒェンの「バスコ・ダ・ガマ」というポルトガル料理屋に連れてってもらってイワシ食ったりして、結局、ポルトサポと感染する。

正直、怖かったのだ、あそこで一人でモナコのエンブレムつけて、スカーフ巻いてるのは。でもポルトガル人といっしょならいじめられない。ボディガードと、トイレに行ってるときの荷物の見張り番も必要だった。で、話をした中でも親切な、ドイツ語も英語もフランス語も堪能なアントニオに「アタクシ、チケ2枚持ってるんだけど、売れないかしら?」と持ちかけてみた。メルセデスからもらったタダ券で来たというアントニオは「じゃあ、僕のチケ(モナコゴール裏)売って、いっしょに観よう」とさっそくセールス開始。で、すぐ商談成立。早い早い。

試合が始まって、押してたのはモナコ。試合前から「ううー、緊張してきたぜぇ」と言ってたアントニオの顔がかなりこわばってくる。アタクシが「アレ!アレ!」ゆってるのが小憎らしそう。アタクシはアタクシで「コレ、何回もやってるうちにゴール入っちゃうな」と信じてた。ジュリがケガでプルソに交代しても、勢いは止まらなかったし。モリ男はプルソのやや下でポストになって攻めあがる。

そんなとき、なんかの隙に間違ってゴールが入ってしまった。ポルトの。

なぜなぜなぜ? アントニオはじめポルトサポが一気に弾ける。「おえおえ!」の大合唱! それでも「まだ1点じゃん。逆転するとこがサッカーの醍醐味なのよ」なんて思ってた。ハーフタイムになって、アントニオは「キミには悪いけど、ポルトはマジ、強いチームなんだよ」と教育してくる。「どう、スカーフ交換する? 青いほうがカッコイイよ」。あのよぉ。調子ぶっこいてんじゃねーぞ。「見える? あそこにいる、赤と白のユニ着た10番が、アタクシのエストレージャで、アモール・デ・コラソンなの。デコ? お呼びでないわ、しっし。あ、でもヴィトール・バイアはカッコイイ」。「でしょ? ハンサムだよねぇ。ポルトガルの女の子はみんな彼に夢中だよ」。

このポルトガル人が平和維持活動(おべんちゃら)に乗ってくれるタイプでホントによかったと思う。後半試合開始直後、アタクシの上のほうの席ではグループで乱闘をおっぱじめてるバカどもがいる。それに便乗してるヤツとか止めに入ったのに参加して盛り上がってるヤツもいるし。「ねえ、アントニオ。アタクシたち喧嘩はやめましょうね」。「美しい日本のトモダチ、そんな心配はいらないよ」。ああ、オマエはな。でもアタクシは自分がやっちまったらどうしようか心配なんだよ。

ともかく後半は前半にも増して、ヴァレンシアから持ってきた“We are the Champion”の気をモナコの選手とサポに注入していた。相変わらず、モナコが押しているのだが、何かがおかしい。サイドの上がりが少ないし、パスがつながらない。でも依然、押しているのはモナコなのだ。これが「ボールを持たされている状態」なの!?

後半70分前、デ・シャン監督はDFジベを下げ、FWノンダを投入、アレ!モナコ! とにかく前へ。とにかくゴールを狙うのだ。が、しかし、その数分後、逆に押し込まれてしまう。決定的だった。そしてスキラッチの投入後、絶望の3点目。

セレモニーが終わり、青いポルトサポの声に押し出されるようにスタジアムを後にする。寒い。寒い。寒すぎる。ホテルに戻ったのは1時過ぎ。そういえば空腹だったと気づき、近所のコンビニ(?)でビールとポテトチップを購入。「アンタ、この辺のホテル泊まってンの? ウチ24時間あけてるから、ビール足らんかったらまた来なね!」と声をかけてくれたオヤジにメルシー・ムッシュウと答えてとぼとぼホテルへ。二夜連続で遅い帰還になったアタクシをニコヤカに出迎えてくれた年配のホテルのバーテンダーに「あら、まだここ開いてるの?」と聞いたら、「あなたが来るならお待ちしていますよ」とやさしく言ってくれたけど、ぜんぜん無理だった。すぐトーマスクックの時刻表を開いて、友人に電話する。

「apo? サバ(元気)? 今どこ?」
「全然サバじゃない。モナコ、負けた。ここ、寒い。今日帰る」
「だってドイツだもの。何時?」
「20時47分着。なんかミスったら、また電話する」
「O.K. ベイベー。じゃ、あとでね」

昨日、意地でもニース行きのフライトを取っていたら勝っただろうか? ヴァレンシアやニースで運を使い果たしてしまったのだろうか? それともホットスポットがあるってだけで「レジーナ」という名前のホテルに泊まってしまったのが悪かったの? 長い長い自問自答が続く。だって選手もデシャンも、あんなによく戦っていたではないか。ここまでつれてきてくれてありがとう。何か失敗があったとしたら、それはアタクシにあるはず……。

プロヴァンスに帰ると、友人たちがキッスとワインで迎えてくれた。「あなたには……」ガールズが飲んでいれば、もちろん出てくるタイプの話。「バーチャルじゃなくて、リアルな男がそろそろ必要、ってサインなんでは?」。そうかもね、マダーム。1年間、熱狂させてくれてありがとう、モリ男。ともかく終わった……。



とりあえず今シーズンは、ね!

おっといけない、いつまでものんびり敗戦ショックをひきずってる場合じゃあなかった。次はポルトガルで、8月にはインテルバルサギャラクティコ、ヴァレンシアのみなさまが来日する。んでもって、メンバー総入れ替えしてて誰がどこにいてもおかしくない次のシーズンが、もう9月には始まっちゃうのよ!

さて、稼ぐよ。その前に、全力で太陽浴びて飲んで騒いでおかなくっちゃ。