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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

サングレ・カリエンテ

コロンビア国立大、構内のゲバラ肖像画を塗り消す(8/6読売)
この4日に、コロンビアのウリベ大統領がブッシュ大統領と会談して、今年で期限切れになる30億ドル規模の援助交際*1プラン・コロンビア」の続行をおねだりした。でも、それが今回の、20年も前に大学に書かれた落書きを今さら突然「消せ!」と訴える住民運動と関係があるなんて、そんなこと、あるはずがない。いや、まったく無関係。もう全然違うに決まってるじゃん。もしもそうなら、メキシコ国立自治大学(UNAM)に「革命万歳!」と描かれてるシケイロスの特大落書きなんて木っ端微塵にしなくちゃいけないもの。

チェが反米・反グローバリゼーションのシンボルのように扱われるゲバラのグローバリゼーション(拡大解釈)は、なんとなく納得がいかない。エルネスト・ゲバラをなぜアイコンにするのかも、なぜ目の敵にするのかもわかりやすいけれど、ゲバラが訴えた中南米(アルゼンチンからメキシコまで)の団結は、この大陸特有のものも大きい。それは好むと好まざると、侵略した者とされた者の血が同じ体、同じ大陸に流れているということで、だからこそ、そんな同胞が片や富を独占し、片や貧困に泣いているのがオカシイと唱えたところにある。もちろん外部への反抗や抵抗もあるだろうけど、求められたのはこの大陸で生きる者の内省だったことは抜け落ちてる。

中南米で「オレにはアツイ血(サングレ・カリエンテ)が流れている」といわれるとき、そこにあるのは善良で一途な情熱だけではない。サングレ・カリエンテとは体に流れる烙印で、被虐者の忍耐強さと同時に、加虐者の暴力性もまた存在する。ゲバラの革命、メキシコの芸術家の壁画ムーブメントもサングレ・カリエンテだが、同時に「妻を殴っても、5分後にはアツアツだから心配いらない」というマチスモ(マッチョ)も、WWEエディ・ゲレロの「ライ・チート・スティール(ズルして、いただき)」に情熱をかけるキャラもまた、サングレ・カリエンテの産物だ。ちょっぴり踏み外せば、服従させるなら愛妻を殴っても平気、欲しければ盗んでも平気なわけだから、お金のために市民を殴るなんて朝飯前だろう。

余談だけど、麻薬とゲリラ撲滅のための「プラン・コロンビア」がいかに機能していないかは、この秋公開されるコロンビア映画そして、ひと粒のひかり』によく描かれている。家計を支える17歳妊婦が、お金のために袋詰めされたコカインを飲み込んでアメリカへ運ぶ“ミュール(運び屋)”になるって話。

ちなみに、チェの故国アルゼンチンでは、芸術家のアンドレス・セルネリ氏が中心になったゲバラ銅像建立プロジェクト*2が進行中で、材料の青銅をネットで募集している。

*1:そのほとんどが軍に供与された→詳しくは益岡さんの8/6の記事「プラン・コロンビアの失敗」を参照

*2:すごくわかりにくい右下のメニュー“monumento al che”ってところに制作中の様子の記事あり