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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

少なくとも都民にとって、選挙は10年前からポップカルチャー

中吊りを見たら、今週発売の週刊誌はすべて、小泉政権がいかに芝居がかっているか、そのポピュリズムやメディア戦略を批判して「ウブい市民のみなさーん。あなたたち騙されてますよー」と教えてくれている。ご親切にありがとうございます。マスコミで物を言うような頭のよい人たちはいつだって、バカな庶民にやさしい。でも、なんだか的外れのような気がする。

知識人が「集団知」よりバカになった時に使える知のリソースはありません。「大衆はバカばっかりだから、小泉にだまされている」というロジックで小泉さんを批判する人は、結果的に小泉さんの応援演説をしているのに等しいのです。大衆はバカでも集団知はバカではないので、その人が正しかったら小泉さんが解散をするわけはないのです。だから、その人が見落していることを、集団知と小泉さんは知っているという推測が成立ちます。

その憶測が成り立つかどうか、「やさしい」知識人が10年前に何をやっていたか、思い出してみたい。

95年、青島都知事が華やかにデビュウした。海外で今回のが「サムライ選挙」って言われてるらしいが、95年はもっと関心を持ってくれて、もっと恥ずかしかった。大阪のエロ・ノックとセットで「トゥ〜・コミィ〜ディア〜ン」とBBCでもCNNでも紹介された。もちろん往年のギャグ映像とセットで。

このときの青島ブームと投票率50.67%の立役者となったのが「やさしい」知識人のみなさまだった。その働きは、今回が劇場型だとしたら、当時はプレイガイド型とでもいおうか。なにしろ「選挙活動をしない」と宣言した姿なき青島候補の“イメージだけ”でブームを作り上げ、「無党派層よ、立ち上がれ」みたいなキャンペーンを展開、青島都知事の36.6%の高得票率につなげたのだ。今「仁義なき戦い」をテレビやあなたのまわりで批判してる10年前から大人だった人の、約5人に2人は、青島候補を押しただけでなく、かつ自らの意思で選んだ人ってわけだ。

その結果、「やさしい都政」の標榜したはずの青島都知事は、都の財政を18年ぶりに赤字に転落させるという華麗な離れ業をご披露してくださるに至った。いったい誰にやさしい都政だったんだろうか? バカなアタクシには今でもわかんない。で、その4年後、役人や銀行をシバいて、バリバリ建て直しはじめたのは、「やさしい」知識人が「おそろしい」と危惧する石原閣下だ。

というわけで、少なくとも10年前からの都民と、エロ・ノックを選んでしまった大阪府民は、PR作戦をよくも悪くも忘れてない。教えてもらわずとも、踊らされることにも慣れっこだ。

で、今回、「やさしい」知識人のアドバイスとしては、「うっかり『小泉おもしれー』って投票したら、ハゲタカファンドに日本のお金を持って行かれちゃいますよ」ってものらしい。たしかに将来、小泉改革は小泉大恐慌と呼ばれるかもしれない。けれど、国がツブれるよりいいんじゃないの。大阪のフェスティバルゲートの“ステキないま”をご覧になったらいい。あといくつ、無責任な役人がフェスティバルゲートを作ったら、日本が破産するのか、するまで作り続けるのか。どんなにない知恵絞っても、失敗したって誰も運用責任を取らない役人や、地元へ補助金をひっぱってくることしか考えない“国会”議員のほうが、ハゲタカファンドより信用できる理由は見つからない。少なくとも日本で活動するハゲタカファンド日本法人は、税金を払う側だし。と、すると、少しでも官から民にお金の決裁権を移しておくほうが安全じゃん。

「キミらバカだから、わかんないかもしれないけど〜」というのは、おっしゃるとおり。だけど、水が高いところから低いところへ流れるように、小難しい話よりわかりやすい話のほうが理解は得られるのもまた事実。だから、本気で理解されたいなら、本気でプレゼンテーションの手法も考える、これは民間じゃあ常識なわけで。読む気にもなんねーよーな資料つくって「プレゼンで企画が通らない」ってボヤくのは、たいてい仕事のできないナルシストと相場は決まってる。

PRはいけないものじゃなくて、大切なものなのだ。だから「やさしい」知識人のみなさまには、ぜひメディアリテラシーを教えていただきたい。PRの効果や読み解き方について、それをどう比較し、そこからどう真実を読みとるのか、いかに自分とのかかわり(リスクとリターン)を考えるか、そしていかに結果を検証するか、を教えてくれるほうが、「劇場型がいけない」と100万回連呼するより、よほど親切だと思う。

おそれ多いことだけど実は、アタクシは疑っているのだ。このままじゃ年金はダメになる。だから、サラリーマン増税か消費税増税かはともかく増税は避けられない。それなのに「サラリーマンかわいそう」とか「増税ひどい」とかで、小泉改革には反対って言ってる人こそ、大衆をバカにしている張本人じゃないかと。フツー、マゾでもない限り、殴られっぱなしはイヤでしょう? そしたら、必要に迫られて税金をぶんどり返す知恵をつけるはず。幸い、アタクシのようなバカでも、会社員でも確定申告はできるから。ここまでのところ、庶民がそういう知恵をつけたら困る人が、いちばん「やさしい」ように見えてしょうがない。だから、そんなキモのところは、教えないで独占しとこーって思ってるンじゃないかなって。

まあ、教えてもらっても、バカなアタクシは顔で選ぶんだろうけど。