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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

グループワーク



3人で1アイテム(またはアイテム群)ずつ順番に置いていく。わたしは2番目で最初に置かれたアイテムは左上の焚き火だった。川ができたのは中盤で、橋や鳥居は終盤だった。わたしが置いたのは時計、魚屋の建物、その前の女性2体、机の上の赤い小さい子(ただし机には別のメンバーがのせた)、お姫様の人形、ガラスの車(四角で右下のエリアを囲っている)。これに「ストーリーをつける」という宿題が出て、「長い宿題」というタイトルの下の文を提出した。*1ちょうどいわき市立美術館で行なわれていた、いわき市で被災したアーティストたちによる企画展を観て感銘を受けた直後だったせいか、こういう内容になってしまった。


長い宿題

わたしは腹の下でブツブツを含んだ生ぬるい風がざわざわそよぐのをちょっと不快に思いながらヤツらの世界を眺めていた。
わたしが動けばヤツらも動く、今まではそう思っていたし、実際そうだった。
ところが、今回はわたしの動きなんて、まるで感じていないかのようにヤツらはまったく動かない。

以前と同じように
「棲家がほしい」
「金がほしい」と言う。
騒いでは悪者探しに明け暮れている。悪者なんていやしない。
いたとすれば、最大の悪者はそう言ってるヤツらなのに。

あるいは、以前と同じように
「わたしはきれいなまま」
「わたしは安全なまま」
「わたしは豊かなまま」だと言い張る。
おかしなものだ。
そう思っているヤツが、わたしの知る限りずっと、きれいだったことも、安全だったことも、豊かだったこともないのに。

さらに呆れてしまうのは、ヤツらのほとんどが「自分とは無関係」と信じていることだ。 こんなヤツらのことなど、もう、どうでもいい、とわたしは思っている。

それでも飽きずに眺めているのは、ほんの一握りの連中が気がかりだから。
「わたしが当事者だ」と感じている連中、この連中だけが、わたしの動きを感じている。
連中はヤツらの世界のために火を焚いて、濡れ衣を着せられた。
ゼウスから火を盗んで長いこと腸を蝕まれたプロメテウスなどこの連中のことを見たらどう考えるだろう?
もっとも彼は望みどおり死んでしまったから(神のくせして)今じゃ思考も感情もへったくれもありゃしないのだが。

ただ、わたしだって正直、プロメテウスのことが羨ましくなることもある。この残念極まりないヤツらの世の中より、同じわたしの動く軸の上で起きているもっと素晴らしいドラマだけを目撃していたい、超新星の誕生とかね。いくらでもある。けれども皮肉なことに、すべてこのヤツらの世の中につながっているのだ、わたしの動く軸の上で。すばらしいドラマの成れの果てがヤツらの世の中だなんて、信じられるかい? だけど、そうなんだ。

とはいえ、わたしはそこまで冷笑家でも、ましてやペシミストでもない。

ほら、帰っていくヤツらもいるだろう。連中へ寄り添おうとしてるヤツらも。エンガジョって結界を張った向こうへ行こうとする小っちゃいの。何の役にも立ちそうもないのに、かつて飼われていた安全地帯を飛び出して。
ああゆう連中にわたしは注意を引かれてしまうんだ、どうしようもなくね。何もしてやれない。わたしはただ一方向に動くだけ、なんだけど。

なあ、小っちゃい小っちゃい子たち、一つだけ教えておくよ。その火は消えない。わたしはずうーっと前から見てきたんだ。その火は消せない。なぜならプロメテウスという神の、愛する人間への、命がけの、プレゼントだから。
だから、もう一度、燃やし方を覚えてほしい。
ちゃんと燃やせばコーヒーも沸かせるし、肉も焼ける。寒さや危険、飢えから君らを守ってくれる。温かくて、明るて、幸せになれる。
君たちは知らないだろうけど、プロメテウスは人類を不幸にするために、火を盗んだんじゃない。

ねえ、初めてマッチをすったときのこと、覚えているかい? ちょっぴり怖くて、でも炎がきれいで、ドキドキ、ワクワクした、あのときを思い出して。
実は、放射能も同じなんだよ。だって、プロメテウスのPはプルトニウムのPなんだもの。
だから、「思い出して」ほしいんだ、大切なことをね。
なぜなら、わたしの動きを、止めたり、逆行したりすることができるのは、君たちの「思い」だけだから。

えっ、わたしは誰かって?
わたしは時だ。
神の時代からうんざりするほど進み続け、世の中をただ眺めているだけの。

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*1:「プロメテウスのpは〜」のくだりももちろん創作、事実ではありません