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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

細木数子は偉大だ。ただし占い師としてでなく、呪術師として

おさる地獄行き!? 細木数子の“ご託宣”に苦悩
たしかに、バカバカしいお話である。しかも、おさるがモンキッキになったところで大勢に影響はない。心悩ますのは、ほんの一握りの熱心なファンだけだろう。

高視聴率をとったという件の放送は、ワタシも視た。そして「細木数子、さすがだな」と思った。彼女は、テレビというメディアで、その効果を最大限に活用し、立派に大役を勤め上げた。ただし、あれは占いじゃない。呪いだ。

もちろん、占いはエンターテインメントだけれど、呪いとは違う。“ご託宣”であるのなら、何に基づいたどこのからのメッセージであるのか、ソースを明らかにしてこそ占いだろう。ところが、おさるを改名を命じた“ご託宣”のソースは、細木数子が何十年もかけて培った占術理論ではなく、「細木数子というおどろおどろしいオバサンのムード」でしかなかった。

けれど、細木数子のバッシングをするつもりはない。もしワタシが細木数子で、オファーにイエスと答えたのなら、同じことをしただろう。なぜなら、それがテレビから求められた役割だったからだ。どんなに箱の外側から「あれは占いではない」と怒鳴ったところで、視聴率とかオモシロイとかで、ああゆうスタイルしかなかったのだ。そのオーダーに完璧に応えた細木数子はプロだ。それにあれは、娯楽番組だった。問題は、テレビにおける“占い風呪い”が横行していることと、その毒気に当てられている免疫ゼロの視聴者が多すぎることだ。

なぜ朝のニュースショー、ワイドショーは揃いも揃って“占いコーナー”があるのか。報道番組なら、なぜニュースを流さず、こんな毒電波に時間を割く? ニュースは面白くない、流す価値がないと言っているのと同じではないか? しかもどのコーナーも「○○座に対してなんとかの惑星がどんな角度を形勢するから」とか「×型のバイオリズムはこうなっているから」といった理論はなく、ただ星座とか血液型といった符合とメッセージをつなげてるだけだ。あれならまだ「おどろおどろしいムード」という裏付けのあった細木数子の番組のほうがはるかにマシだ。悲しいことに、○○座、とか×型といった符合に人間は反応してしまいやすい。そんな符合をつけて、メッセージを垂れ流すのだから始末におえない。

しかも、この毒電波には中毒性がある。今日の○○座の運勢がよかったら「明日も見よう」と思う。悪ければ「明日はいいだろう」と期待をこめる。その結果“毎日チェック”してしまう。それが「見ないと不安」に変わるまで、長くはかからない。けれど、そんな依存状態のうちはまだいいのだ。こういうことを真に受けやすい免疫ゼロの人や、依存状態が長く続いている人は「ランチにはざるうどんが吉」とか言われると、その通りに行動しやすくなる。こうなると、問題はさらに深刻だ。

その悪影響が確実に現れるのは、何らかの事情で、ざるうどんが食べられなかったときだ。たとえ運勢自体が「吉」だったとしても、何か小さな失敗をするたびに「ざるうどん」を理由にし、「ざるうどんを食べなかったワタシ」を責めるようになる。その人の状態しだいでは、それが強迫観念にかわっていくのはたやすい。自分が不幸になったのは「あの日、ざるうどんを食べなかったせいだ。あの日、ざるうどんを食べられなかったワタシは幸せにはなれない」と次第に思い込んでいく。そういうマインドに支配されている限り、幸せになれないし、成功もできない。当たり前だ、自分で「幸せになってはいけない」と思い込むのだから。

おそらく、こんなふうになってしまった最初のきっかけは、ささいな偶然なのだ。今朝のテレビで感染して、アタマの隅っこで潜伏していた「ラッキーカラーは赤」ウイルスが「そういえば今日、カレに会いに行ったとき、丸の内線(赤い車両)に乗ったわ。だからデートが楽しかったのか」と発病する。そのあと「そういえば、あれも赤だったわ」が芋蔓式に出てくる。当たり前だ、好ましい経験と赤を自分で結びつけていくのだからじゃんじゃん見つかる。同じ数だけあったはずの、ナイスな青や、ラッキーな黄色、楽しいピンク、おいしい黒には完全に目を伏せる。そうして「自分で的中率を高めてしまう」。さらには「自分で自分に呪いをかけていく」ようになる。

今はマイ占い師ブームだそうだ。そりゃ、結構。日本では「占い師がカウンセラーがわりにされてる」なんて話はバブル前からあった。占い依存症も「“ご託宣”がなければ行動できない」なんてレベルで、薬物依存メンヘラーのドクターショッピングよろしく、占い師ショッピングして歩くのも結構。その分、しっかり遊興費を稼ぎゃいい。けれど、あの毎朝、毎朝の毒電波は、ダメだ。あれは、強迫神経症につながっている。なぜなら、占いじゃなくて、呪いだからだ。しかも、音だけのラジオや文字情報+αの本と比べて、音と色と映像など情報量の多いテレビのインパクトは高い。つまり、アタマの端っこにこびりつきやすい。にもかかわらず、どんないい加減なメッセージを流したってテレビ局側が罪を問われることはないのだ。「運勢? そりゃ占いですから信じるのも信じないのも“自己責任”ですよ」でクレームは封じられる。

実は朝の番組でどこもかしこも占いを流すのが、こういう中毒を蔓延させ、“視聴率”を上げるため、というオカルトな理由だったとしても、ワタシは100%納得できる。


あなたはテレビの毒電波による呪いを受けない自信はありますか? ちなみに“呪い”と書いて、「のろい」とも「まじない」とも読みます。ここまで「のろい」と読んできた人は、“朝のテレビ中毒”になる可能性があるといえるでしょう。中毒にならない方法はただ一つ、朝、テレビで占いが始まったら消すことです。