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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

人生に敗れたとき、甲州街道を歩けば七賢に会える(愛飲酒記)

いろいろあって山梨に行ったら、東方の三博士ならぬ甲斐の七賢に会った。すばらしい。もしも人生でズタボロになったとしても、甲州街道をめざせばいい。そこで、福音に出会えるということがわかったから。

七賢は、甲斐駒ヶ岳(2967m。古い地図では2966mになってるけど、フォッサマグナのハジっこに位置していて地面が隆起している関係で、最近測り直したら、1メートル高くなってたという)の分厚い花崗岩の層で何十年、あるいはそれ以上かけて濾過された伏流水で仕込まれる。山梨でうまい米はないと思われてる。けれど、この地域だけは別。武川米として知られる武田信玄の時代からの米どころ。うまい水とうまい米からは、うまい酒が生まれるのは自明で、アタクシがそれに出会い、ハマってしまうのもまた自明。ああ、アタクシって愛されていたんですね、お酒の神さまに。神さま、ありがとう。うるうるうる。

七賢の直営レストラン臺眠(だいみん)で、お昼ご飯で無濾過の生酒をいただく。うわー、甘いよ、辛いよ、旨いよ。ああああ、リッチだよ。えーん。ご飯なんかもういらねー。これだけ、ちょうだい、という状態になる。なったんだけども、夕顔の実のそぼろ煮(冬瓜よりも、もっと味があってテクスチャーがしっかりしてる)だとか、つる菜(しっかりしたホウレンソウってカンジ。もともとは浜辺で自生してるらしい)をはじめとする野菜の天ぷら、おだしの効いたとろろ、うまい豆腐の入った豚汁、濃ゆい味のトマト、そして地鶏にしいたけ……と、お膳に並べられたら、そっちを放って置くわけにもゆかない。あー、ダメ人間でよかった。

そのあと、七賢の蔵元でプチ利き酒。25年ものの大吟醸がまた、すごい。ただの年増ってーんじゃなくて、これは25年でピークを迎えるように仕込まれて、そのあと静かに土蔵でアタクシに目を覚まされるのも待っていた、眠り姫みたいな子なのね。

ついでに言うと、ここの酒蔵の建物は170年前に諏訪の宮大工によって建てられた名家で*1明治天皇行幸の際にお宿になった*2。ちなみにそのときの随行員は400人。ベッドやお風呂なんかもいっしょに運び込まれ、お休みになった部屋の隣はぶち抜かれてトイレが作られた*3。3か月前には先発隊が入り、ことに井戸には見張りが立って守ったとか。終戦まで、この座敷は誰も人を通さず、“神のおわした間”として保存されていたそうだ。見どころはいっぱいあるけど、個人的には、七賢の名の由来となった、この家の初代(今は14代目)が本家筋から送られたという中国の七賢者を描いた見事な欄間(らんま)と、座敷を照らす大正か昭和初期の電灯のシェードに感銘を受けた。

あと、番犬として飼われている八代目セブン君。もう大分おじいちゃんのコリーで、ドッグフードと少々の生酒を晩酌で召し上がるんだとか。彼は違いがわかる犬らしく*4、アタクシたちが呼んだらお昼寝中にもかかわらず大きな犬小屋の奥から出てきてお愛想してくれたが、バスガイドのオネーチャンにはすごい勢いで吼えたらしく、彼女は前を通るたんびに怯えてた。

このオネーチャンに無情にも「そろそろ出発です」とうながされて、「まだ2分あるじゃん」とかセコく抵抗してタバコを吸ったりしたんだけど、ここから去るのがホントに名残惜しかったよう。ま、また行くだろうけど。

*1:山梨県の重要有形文化財になっている

*2:売店でお願いすると、そのときのお話しを含めてガイドしてくれる

*3:今はない

*4:それがどんな違いだかはわからないが