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apo (id:MANGAMEGAMONDO) が妄想を吐き出していきます。

ミーハーな所属欲求

ほんとうに、日本人の愛国心は、これらの騒がしい愛国者が言いふらすことのできるようなものではなく、あまりに深いものである。それは無言であって無意識のものである。しかし、これら「タルチュフ」たちが口に唱える愛国心は、健康と力を求めて叫ぶ病人の訴えにほかならない。

ヴァレンシアでの03-04リーガ・エスパニョーラの最終節、歴史的な二冠達成を祝うスタジアムで。あるいは、W杯でメキシコのサポーターと応援歌を歌ったとき。アタクシの所属欲求が烈しくうずく。東京にもサッカーチームはあるけれど、FC東京ジャイアンツよりも馴染みがないし、ヴェルディにいたってはアタクシの脳内では「川崎」にあるチームだ。

どんなに一人で生きているといっても、ヒトは群れる習性を持った生き物だし、群れに誇りを持つことは喜びだ。けれど、どうもアタクシには自分が日本人であることの「自覚」や日本への「愛国心」が足りないように思う。

はじめてメキシコに旅行したとき、メキシコシティのチャプルテペック公園で出会ったカップルにメキシコの国旗のデザインにもなっている“サボテンに留まったヘビをくわえたワシ”について説明してくれた。アステカ族(メシーカ人)の神話では、住む場所を探し、ご先祖さまたちは何代にもわたる長い旅を続けていた。あるとき湖の畔でこのワシを見て「ここに国を築けという神託」と受け取り、現在のメキシコシティ、かつてティノチティトランに巨大な水上都市を造ったという。

カップルの彼氏のほうが「これはパトリオットの象徴です」と言った。イラクから飛んでくるミサイルを撃ち落とす新兵器をイスラエルで使ってなかったら、あるいはトム・クランシー原作の映画がヒットしてなかったら、アタクシは“パトリオット”という英単語の意味を知らなかったに違いない。日本語で、ですら、よくわかってないのだ。そんなアタクシに、彼は手を胸に置いて、これが愛国心だ、という。なんとなく自分を恥じた。彼が当然のように持っているものがアタクシにはない、と思ったからだ。自分には臓器が一つ欠けているような気がした。

そのあと彼らは、アタクシたち観光客だけで行くには危険だった(当時)、バルガルディ広場でマリアッチに招待してくれた。日本に来た、観光客にアタクシはここまで親切にできたためしがない。施しを受けるばっかりだ。

日本の神話や文化を知っていても、源氏も平家も天皇になってるから、アタクシたち日本人はみんな天皇の親戚よと笑っても、でも考えてみれば「愛国心」を意識したことがない。ないから、強烈にほしがるのかしら? ミーハーに、所属したがるのかしら? あるいは、烈しく拒絶するのも、不健康な愛国心にも思える。

アタクシの場合は、それがサッカーに出ているけど、それが会社とか学校のヒトもいるかもしれない。あるいはブランドとか。どちらにしても危ういな、と思った。扇情的に煽られたとき、ひとたまりもなく迎合してしまうか、もしくは拒絶する勇気がなくてこそこそ言いながら、賛同するフリをするか。

まあ、答えが出ないという答えしか出ないのだけれども。